「子ども名義の口座」は誰の財産? 相続で問題になる名義預金の判定基準と注意点
亡くなった父の自宅を整理していたら、金庫の中から見覚えのない自分名義の定期預金証書が出てきた——。相続の場面でよくある光景ですが、「親がプレゼントしてくれたもの」と思い込んで相続税の申告から外してしまうと、税務署から指摘を受けるリスクがあります。
名義は子どもや孫であっても、実質的には亡くなった方(被相続人)の財産と判断されるケースがあります。これが「名義預金」の問題です。
名義預金とは何か
名義預金とは、口座の名義人と実際にお金を出した人・管理していた人が異なる預金のことです。
相続税法第2条では、相続や遺贈によって取得した財産の全部に相続税を課すると定められています。国税庁の「誤りやすい事例」でも明確に示されているとおり、名義がどうであれ、被相続人が資金を拠出し財産と認められるものは相続税の課税対象となります。
つまり、子どもや孫の名義であっても、実質的に被相続人が管理・運用していた口座は、相続財産として申告しなければなりません。
税務署が確認するポイント
税務署が「これは被相続人の財産ではないか」とチェックするポイントは、次のとおりです。
- 預金の原資は誰が出したか
- 口座を開設し、預け入れをしたのは誰か
- 預け入れた人の意思はどのようなものだったか
- 通帳と印鑑を保管し、出し入れをしていたのは誰か
被相続人がお金を出し、被相続人が口座を開設し、被相続人が通帳と印鑑を手元に置いて日々管理していた——こうした事実が重なるほど、名義人である親族の財産ではなく、被相続人の名義預金と認定される可能性が高くなります。
平成30年8月22日の裁決事例(TAINS J112-4-06)でも、相続人名義の口座に入金された資金について、原資の管理・運用を被相続人が行っていたと認定され、名義預金として被相続人の財産と判断されています。
「贈与を受けた」と言えるケースとは
反対に、被相続人が親族に贈与の意思を示し、親族もそれを受け取る意思を表示していたことが書面等で明確に確認できる場合は、贈与として贈与税の課税対象となります。口頭でのやり取りだけでは、相続が発生したときに贈与の事実を確認することが難しくなる場合があります。
夫婦間の名義預金にも注意が必要
「夫の給与を妻名義の口座に移して管理していた」という家庭も多いかと思います。しかし、民法第762条では、婚姻中に自己の名で得た財産は、その人の特有財産(単独で有する財産)とされています。
したがって、夫が稼いだ給与を妻名義の口座に預金した場合、前述の帰属判定要素に照らすと、夫の名義預金と判断される可能性があります。
生前の意思を「見える化」しておくことが重要
被相続人が生前に子や孫の名義で口座を作るのは、相続税を減らす動機もあるでしょうが、自分の意思で大切な人に財産を渡したい願いもあるのではないでしょうか。親族名義の預金口座が見つかったときは、被相続人の生前の意思を尊重して遺産分割協議を進めることで、話し合いが円滑に進むかもしれません。
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