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キャリアアップ助成金の変更点~縮小・厳格化が進む~

使い勝手が良く、例年多くの事業主が活用してきた「キャリアアップ助成金」。時代に合わせ少しずつ変更が加えられてきていますが、2022年度の改正により、「縮小」「厳格化」が進み、申請の条件を満たすのがこれまでより難しくなりました。

ここで、どういった点が変更されたのか見ておきましょう。

キャリアアップ助成金とは

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するための、正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主に対する助成金です。現在以下の7つのコースがあります。

正社員化支援 ①正社員化コース 有期雇用労働者などを正規雇用労働者に転換または直接雇用
②障害者正社員化コース 障害のある有期雇用労働者などを正規雇用労働者などに転換
処遇改善支援 ③賃金規定等改定コース 有期雇用労働者などの基本給の賃金規定などを改定し2%以上増額
④賃金規定等共通化コース 有期雇用労働者などと正規雇用労働者との共通の賃金規定などを新たに規定・適用
⑤賞与・退職金制度導入コース 有期雇用労働者などを対象に賞与・退職金制度を導入し支給または積立てを実施
⑥選択的適用拡大導入時処遇改善コース 選択的適用拡大の導入に伴い、短時間労働者の意向を大切に把握し、被用者保険の適用と働き方の見直しに反映させるための取組の実施
⑦短時間労働者労働時間延長コース 有期雇用労働者などの週所定労働時間を3時間以上延長し、社会保険を適用

上記のコースのうち、制度の見直しがされた主な点について具体的に見ていきます。

①正社員化コース・②障害者正社員化コース

正社員転換または直接雇用への切り替えに対する助成金です。

2022年4月以降、正社員化コースでは、

有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換に対する助成が廃止され、有期→正社員(57万円/人)と、無期→正社員(28.5万円/人)のみとなります。つまり、単なる無期転換では助成されなくなります。

変更前 変更後
1. 有期 → 正規:1人当たり 57万円 1. 有期 → 正規 : 1人当たり 57万円
2. 無期 → 正規 : 1人当たり 28万5千円
2. 有期 → 無期:1人当たり 28万5千円(廃止)
3. 無期 → 正規:1人当たり 28万5千円

また、2022年10月以降には、両コース(正社員化・障害者正社員化)において、正社員と非正規雇用労働者の定義も変更されます。

正社員定義の変更

現行 同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者
改正後 同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者
ただし、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る

正社員の定義に「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」の適用が追加されます。助成を受けるには、昇給があり、かつ賞与が支払われるか退職金制度が必要となります。

非正規雇用労働者定義の変更

現行 6カ月以上雇用している有期または無期雇用労働者
改正後 賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6カ月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者
例)契約社員と正社員とで異なる賃金規定(基本給の多寡や昇給幅の違い)などが適用されるケース

非正規雇用労働者の定義において、現行の6カ月以上雇用している有期または無期雇用労働者に、「賃金の額または計算方法が『正社員と異なる雇用区分の就業規則等』の適用を受けていること」が追加されます。

つまり、正社員とは別の賃金規定や就業規則などを整備し、かつ6カ月以上の適用が必要ということで、要件が厳しくなっています。

その他のコースでの変更点

④賃金規定等共通化コース

正社員と共通の職務に応じた賃金規定などの整備に対する助成金です。

今回、2人目以降の対象労働者に対する加算が廃止されます。また、家族手当・住宅手当・健康診断制度が対象外となり、対象は賞与と退職金のみ(正社員との共通化までは必須でない)となります。

⑤賞与・退職金制度導入コース(旧諸手当制度等共通化コース)

諸手当など(賞与、退職金、家族手当、住宅手当、健康診断制度)の制度共通化への助成を廃止し、賞与または退職金の制度新設への助成へと見直されます。

  旧制度   新設制度
助成対象制度 1.賞与 1.賞与
2.退職金
2.家族手当(廃止)
3.住宅手当(廃止)
4.退職金
5.健康診断制度(廃止)

⑦短時間労働者労働時間延長コース

延長すべき週の所定労働時間が「5時間以上」から「3時間以上」へ緩和され、助成額の増額措置が2024年9月末まで延長されます。

まとめ

上記で見てきたように正社員化コースを中心に、基本的に縮小・厳格化となりました。以前助成金を受けたからと要件を確認せずに申請すると、要件に合致しない危険性があるので、注意が必要です。

一方、短時間労働者労働時間延長コースでは、延長時間が3時間以上に緩和されるといった措置も行われており、新たに有期雇用労働者に社会保険適用を検討している事業主にとっては一部ハードルが下がっています。

足下の厳しい状況下においても優秀な正社員を増やすことは企業の成長に欠かせません。非正規雇用労働者のキャリアアップ促進に取り組む際には、こうした助成金も積極的に活用していくようにしましょう。


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