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「物」から「通貨」へ 暗号資産税務の変遷

5月上旬、暗号資産「テラ」「ルナ」が大暴落し価値が99%減となったことが大きく報道されるなど、投機的側面が話題になることの多い暗号資産ですが、支払手段として使用できる場面も増えてきています。歴史の浅い暗号資産は既存の資産になかった特徴を数多く持っており、その取り扱いについては何度か税務上大きな変更が加えられていることもあって、注意が必要です。
そこで今回は、税務における暗号資産取り扱いの変遷と個人で取引する場合の、現状における注意点をご説明します。

暗号資産の税法上の変遷

2017年:消費税の計算上、貨幣性を認知され非課税資産に

「ビットコイン」や「イーサリアム」などに代表される暗号資産が2009年に登場して10年以上が経過し、広く一般に知られるようになりました。

暗号資産とは、以下のように定義されるものです。

  1. 不特定の者に対して、代金の支払いなどに活用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドルなど)と相互に交換できる
  2. 電子的に記録され、移転できる
  3. 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリぺイドカードなど)ではない

(参照:日本銀行ホームページ「暗号資産(仮想通貨)とは何ですか?」)

国が発行する法定通貨と違い、価値の裏付けがなく価格が大きく変動するため投機対象として扱われてきた暗号資産ですが、2017年4月1日施行の改正資金決済法で、法律上の非認知の存在から、支払手段としてその性質が新たに認知されるようになりました。

これを受けて、当初は消費税課税対象資産であった暗号資産は、平成29(2017)年度税制改正により2017年7月1日から非課税資産とされました。

ただし、消費税法上、土地のような非課税資産ではなく、また、有価証券のような対価の5%のみを課税売上割合の計算に反映させる非課税資産でもなく、「貨幣と同じ支払手段等」として課税対象外的な非課税資産です。

したがって、譲渡し対価を得た場合も課税売上割合の計算に影響しません。

2020年:「仮想通貨」から「暗号資産」に名称変更

さらに、「仮想通貨」(Virtual currency)の呼称は法定通貨との誤解を生みやすく、暗号資産(Crypto-assets)と呼ぶのが国際的風潮であることなどから、2019年に資金決済法の改正がなされ、法令上の名称が「仮想通貨」から「暗号資産」に変更されることになりました。

これを受けて、税法令での「暗号資産」への名称変更の改正も一斉に行われ、2020年5月1日から施行されています。

暗号資産の所得税法上の取り扱い

暗号資産を売却した時

暗号資産の譲渡による所得は、暗号資産が所得税法施行令で棚卸資産として定義されていることから、事業的規模と認められる場合などを除き、原則として雑所得となります。

保有する暗号資産を売却(日本円に換金)した場合の所得金額は、その暗号資産の譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価などとの差額となります。

譲渡原価は、個人の場合は原則として、総平均法により計算した金額となります。そのほかの必要経費がある場合には、その必要経費の額を差し引きます。

暗号資産で商品を購入した、ほかの暗号資産と交換した時

保有する暗号資産で商品を購入した場合や保有する暗号資産Aをほかの暗号資産Bと交換した場合には、それぞれの受取資産の時価を対価として暗号資産の譲渡がなされたことになります。

暗号資産を譲渡した時

暗号資産は棚卸資産なので、個人が贈与や遺贈により暗号資産をほかの個人または法人に移転させた場合、その贈与や遺贈の時における暗号資産の価額(時価)が暗号資産譲渡対価となります。

また、個人が、時価よりも著しく低い価額の対価による譲渡により暗号資産をほかの個人または法人に移転させた場合には、時価のおおむね70%に相当する金額が暗号資産の譲渡金額となります。

暗号資産を保有している時

暗号資産に含み益がある場合、個人では課税対象となりません。

なお、法人では期末に時価評価し含み損益があれば損金の額または益金の額に算入する必要があります。

まとめ

暗号資産の税務について国税庁では、

・「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」(2017年12月)

・「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」(2021年12月)

などでその取り扱いを示しています。

数十人が計約14億円の申告漏れを指摘(2021年10月3日付日本経済新聞「仮想通貨で一斉税務調査 14億円申告漏れ、グレー節税も」)されたと報道があったように、最近では暗号資産の取引に対して国税当局も目を光らせています。

意図せずに申告漏れとならないよう、税務上の取り扱いには注意しましょう。


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