スポットバイトの課税・申告・ 社会保険
物価高に対して十分な給与上昇がみられないことなどを背景に、本業とは別に「すき間時間に単発で働く」という雇用形態を選ぶ人が増えているようです。
働く側にとっては、「働きたいときだけ、履歴書の提出や採用面接などの手間をかけず、給料もすぐに受け取れる」ことにメリットがあり、雇う側にとっては、「忙しい時にだけ単発でほしい働き手を、長期雇用責任の縛りなく、確保できる」ということにメリットがあります。
急速に広がった新しい雇用形態だけに、その仕組みについては誤解も見られるようですので、ここでは特に気を付けたい、働く側・雇う側それぞれの課税関係・社会保険関係を見ていきます。
スポットバイトの課税・申告・社会保険:働く側
給与課税の対象で申告が必要な場合もあり
「給与がそっくりその日にもらえる」というイメージがあるスポットバイトですが、実態はどうでしょうか?
スポットバイトの場合、勤務先と直接雇用契約を結びますので、バイト代は給与として課税されます。例えば、Uber Eatsの配達員のように雇用契約を結ばず個人事業主となる形態とは異なります。
給与の支払いは時給もしくは日給で労働日ごとに支払われますので、税務上は「日雇賃金」として扱われ、源泉所得税の算定方法としては、丙欄の適用となるものと考えられます。
日雇賃金の場合、日額が9,300円以上の支払いから源泉所得税を差し引いて支給されます。すなわち、日額9,300円未満では源泉所得税がゼロなので、このことが「給与がそっくりもらえる」の誤解の原因のようです。
なお、スポットバイトはそもそも短期の雇用で継続性を前提としていませんが、雇用継続が2カ月を超えたら、その時点から正式雇用に切り替えての給与計算となり、源泉所得税の算定方法としては、甲欄または乙欄の適用となる可能性があります。
確定申告の必要性ですが、スポットバイトでしか働いておらず、年収が103万円以下の場合は、確定申告しなくとも構いません。
ただし、源泉徴収されている所得税がある場合は、確定申告すれば戻ってくる可能性があります。最近の確定申告はスマホでも完結するようになっているので、手間を惜しまず確定申告することをお勧めします。
一方で、年収が103万円超で源泉徴収されていない場合は確定申告が必要です。
また、本業の勤務先以外に単発のバイトとして副収入がある場合は、給与所得の源泉徴収票が2以上あることになりますが、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。
源泉徴収の有無や医療費控除等の適用によっても変わってきますが、必ず追加納税というわけではなく、申告すれば税金が戻ってくる可能性もあります。
社会保険は対象外
2カ月を超えない短期労働者は健康保険・厚生年金保険の加入対象外です。そのため、社会保険に加入はできません。
スポットバイトの課税・申告・社会保険:雇う側
源泉徴収と年末調整、消費税
単発とはいえ、労働者を雇う以上、雇う側では、給与の源泉所得税の事務手続きと労働管理の取り扱いが発生します。
人材派遣の場合は、派遣される人の給与の支払いや労働管理は派遣元の会社(派遣会社)が行います。派遣社員の派遣先の会社は、派遣会社に外注費+消費税を支払うだけとなります。
一方、スポットバイトの場合は、働いてくれる人とは労働契約を結び、給与を直接支払います。紹介(仲介)会社へは紹介料+消費税を支払います。
給与の支払いも労働管理も雇い入れ側が行います。
給与の支払いは時給もしくは日給で労働日ごとに支払われます(=日雇賃金)ので、源泉所得税の算定方法としては、丙欄の適用となるものと考えられます。
そのため、日額が9,300円以上の支払いから源泉所得税を差し引いて支給することになります。
スポットバイトはそもそも短期の雇用で継続性を前提としていませんが、2カ月を超えたらその時点から正式雇用に切り替えての給与計算となり、源泉所得税の算定方法としては甲欄または乙欄が適用され、年末調整の対象となる可能性があります。
社会保険の適用と労務管理
2カ月を超えない短期労働者は健康保険・厚生年金保険の加入対象外です。そのため、社会保険の手続きは不要です。
一方、スポットバイトも労働者ですので、雇う側での労務管理が必要です。
スポットバイトをする人が正規に勤務先を持っていて副業として働いている場合など、それぞれの事業場の労働時間を通算して管理しなければなりません。
雇う側は、やらなければならない業務やリスクを把握し、働く人が安心・安全に働けるよう労務管理を徹底しなければなりません。
適切な労務管理のためには、社会保険労務士にサポートしてもらうことをお勧めします。
当法人では、経験豊富な職員が税務会計を通じ会社の成長を全力でサポートいたします。
また、当グループの「ペンデル社会保険労務士法人」では、各種社会保険業務の申請代行や人事制度構築支援といった社労士業務全般を承っています。
お困りごとやご質問などございましたらお気軽にお問い合わせください。