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研究開発税制「人件費の控除」で見落としていませんか?兼任社員も対象になる4つの要件

研究開発税制と「人件費」の深い関係

研究開発税制(試験研究を行った場合の法人税額の特別控除)は、企業が試験研究を行った場合に、試験研究費に税額控除割合を乗じた金額を法人税額から直接控除できる制度です。

この制度を実務で活用する上で最大のポイントとなるのが、試験研究費の中でも金額的な比重が高い「人件費」の集計です。

対象となる「人件費」とは、「専門的知識をもってその業務に専ら従事する者」に対する次のような費用を指します。

  • 給与・賞与・諸手当・退職金
  • 法定福利費・福利厚生費 など

給与や賞与だけでなく、会社負担の社会保険料や退職金まで幅広く含まれる点が重要です。

「専ら従事する者」とは誰のことか

ここで問題になるのが、「専ら」という要件です。

原則として「専ら従事する者」に該当するのは次のような方です。

  • プロジェクトの全期間を通じて研究業務に従事する者
  • 研究部門に所属する者・研究を専業とする者(研究者としての肩書を有する者など)

100%専属で研究業務に当たっている社員、というイメージです。

しかし、この原則だけを根拠に「うちには専任の研究員がいないから適用できない」と判断してしまうと、本来受けられる税額控除を丸ごと見逃してしまうことになりかねません。

兼任社員でも「専ら」要件を満たせる

どの企業でも、限られた人的資源の中で研究開発に取り組まざるを得ないため、研究以外の業務を兼務しながらプロジェクトに参加するケースが多く見られます。

実は、次の4要件をすべて満たす兼任者についても、「専ら従事する者」として取り扱うことができます(平成15年12月25日付・国税庁課税部法人課税課長通知)。特に人的余裕が限られる中小企業を念頭に、実務での適用拡大を明確にする目的で発出されたものです。

① 担当業務の期間中は専属的に従事していること

プロジェクト全体への参加期間ではなく、その者が担当するフェーズが行われている期間中、専属的に従事していることが必要です。プロジェクト全体に関わり続ける必要はありません。

② 担当業務と専門知識が研究開発に不可欠であること

担当業務が試験研究のプロセスにおいて欠かせないものであり、かつその者の専門的知識が当該業務に不可欠であることが求められます。

③ 従事期間が通算しておおむね1か月(実働20日程度)以上あること

連続して従事する必要はありません。断続的な従事であっても、担当業務が行われる時期に専属的に従事しているのであれば、それらの期間を合算して判定します。

④ 従事状況が明確に区分され、人件費が適正に計算されていること

勤務記録(作業日報など)により従事状況が明確に区別されており、対象となる人件費が適正に算出されていることが条件です。

計算イメージ:8か月のプロジェクト事例

次の具体的な数字で、実際の控除対象人件費の計算をイメージしてみましょう。

プロジェクト概要(期間:8か月)

  • A氏(設計部・月給60万円)
  • B氏・C氏(生産部・月給各30万円)

3名はそれぞれ下記の期間に専属的に試験研究へ従事しました。なお評価・分析フェーズは業務の特殊性から断続的な従事となっています。

  設計開発(1〜3月) 試作(4〜6月) 評価・分析(7〜8月)
A氏 実働60日 実働60日 実働30日
B氏 実働20日 実働60日
C氏 実働30日

月稼働日数を20日として計算すると、控除対象となる人件費の合計は次のとおりです。

  • A氏: 60万円 ÷ 20日 × 150日 = 450万円
  • B氏: 30万円 ÷ 20日 × 80日 = 120万円
  • C氏: 30万円 ÷ 20日 × 30日 = 45万円
  • 合計:615万円

C氏は評価・分析フェーズのみの従事ですが、実働30日(約1.5か月)となるため、③の「通算1か月以上」という要件を満たしています。断続的な従事であっても、担当業務が行われる時期において専属的に従事していれば期間を合算できる、という点がポイントです。

実務対応のカギは「記録の整備」

以上の4要件の中で、実務上特に注意が必要なのが④の「従事状況の明確な区分」です。税務調査では、研究プロジェクト計画書・日々の作業日報・担当業務の詳細記録などが根拠資料となります。

「制度は知っていたが、書類が整っておらず適用できなかった」というケースは珍しくありません。制度の適用を検討するのであれば、プロジェクト開始時から計画書と勤務記録を整備しておくことが重要です。

研究開発税制は、製造業・IT業・食品開発業など試験研究に取り組む企業であれば業種・規模を問わず活用できる可能性があります。「専任の研究部門がない」という理由だけで諦めず、兼任社員の人件費が対象となるかどうか、ぜひ一度確認されることをお勧めします。

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