複数の会社で働く人の社会保険はどうなる?2か所以上勤務時の手続きと保険料の仕組みを解説
副業・兼業の普及や、複数の法人で役員を兼務するケースが増えるなか、「2か所以上の会社で社会保険の加入要件を満たしたら、いったいどうなるのか?」と疑問に思う経営者や担当者は少なくありません。
このケースでは、手続きの仕組みが通常の社会保険とは異なり、届出先や保険料の計算方法にも独自のルールがあります。この記事では、2か所以上勤務時の社会保険の仕組み、手続き方法、そして保険料の計算の考え方までわかりやすく整理します。
そもそも、どんな人が対象になるの?
社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、同時に2か所以上の事業所に勤務して報酬を受ける場合、2つ目の会社についても届出が必要です。それぞれの事業所ごとに社会保険の加入要件を満たしているかどうかを個別に判断し、両方で要件を満たした場合は、両方の会社で加入することになります。
たとえば、次のような働き方をする方が対象となります。
- A社およびB社で、法人の代表者
- A社で法人の代表、かつB社で正社員として勤務している
- A社およびB社で正社員として勤務している
- A社およびB社で短時間労働者として勤務し、それぞれで加入要件を満たしている
※ 加入要件は企業規模によって異なります。
手続きの流れと提出先
2か所以上の事業所で社会保険の加入要件を満たした場合、まずいずれか1つの事業所を「主たる事業所」として選択します。
その後、被保険者本人から「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」 を、管轄の年金事務所または日本年金機構に提出します。
提出期限は「事実発生から10日以内」です。期限を過ぎると、正確な保険料の徴収が遅れるなどのトラブルが生じる可能性があります。
また、以下の場合は追加の手続きも必要です。
- 健康保険組合加入事業所を選択した場合: 健康保険組合への届出も別途必要
- 70歳以上の方: 「厚生年金保険 70歳以上被用者所属選択・二以上事業所勤務届」の提出も必要
健康保険証は1枚、保険料は「合算&按分」で決まる
健康保険証は1枚だけ
健康保険証(またはマイナ保険証による資格情報)は、本人が選択した主たる事業所を管轄する保険者から1枚発行されます。複数発行はされません。
保険料は「合算報酬で決定し、按分して負担」
保険料の計算は、少しわかりにくい仕組みになっています。
- 各事業所の報酬を合算して、標準報酬月額を決定する
- 決定した標準報酬月額に保険料率をかけて保険料の総額を算出する
- 算出した保険料を、各事業所で受ける報酬月額の比率に応じて按分し、それぞれの負担額を決定する
つまり、1か所だけの給与で計算するのではなく、すべての報酬を合わせた上で保険料が算定される点がポイントです。
計算例(厚生年金保険料の場合)
| 項目 | 金額 |
| A社の報酬月額 | 20万円 |
| B社の報酬月額 | 10万円 |
| 合算報酬月額 | 30万円 |
この合算額30万円をもとに標準報酬月額を決定し、労使合わせた保険料率で保険料総額を計算します。その後、按分するとA社は3分の2、B社は3分の1の割合でそれぞれ保険料を負担することになります。
健康保険料については、協会けんぽの場合は都道府県ごとに料率が異なりますが、按分の考え方は厚生年金と同じです。
経営者・担当者が押さえておくべきポイント
2か所以上勤務の社会保険手続きは、通常の社会保険手続きと比べて複雑で、届出漏れや保険料計算の誤りが起きやすい領域です。特に、一方の会社で報酬が変動した場合、もう一方の会社の保険料にも影響が出る点は見落としがちです。
副業・兼業を認める会社や、グループ会社間で役員・従業員を兼務させているケースでは、該当者の発生を早期に把握し、手続き漏れのない体制を整えることが重要です。
ご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。
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