租税特別措置の適用実態調査(令和6年版)から見るM&A税制と賃上げ促進税制の利用実績の差
財務省が毎年国会に報告している租税特別措置の適用実態調査。令和8(2026)年2月に公表された「令和6(2024)年版」では、制度によって利用実績に大きな差があることが浮き彫りになりました。
適用実態調査とは
租税特別措置の適用実態調査は、財務省が措置法の利用状況を毎年国会に報告しているものです。制度の効果や課題を検証するための基礎データとして位置付けられており、最新版は令和8年2月付の「令和6年版」となります。
税額控除への明確なシフト
今回の調査で印象的だったのは、特別償却と比較して税額控除の利用が7倍近くと圧倒的に多い点です。
特別償却が課税の繰延べであるのに対し、税額控除は事後年度に尾を引かないという違いが、この利用実績の差につながっていると考えられます。
利用されていないM&A関連税制
中小企業事業再編投資損失準備金の利用実態
M&Aに関連する中小企業事業再編投資損失準備金については、経済活動としてのM&Aの実績件数(令和7(2025)年5,115件)に対し、適用件数はわずか110件(令和5(2023)年77件、令和4(2022)年69件)と極めて少数です。
この制度は、M&A投資額の70%を損金算入できる仕組みです。適用実態調査の適用総額は、この損金算入額の合計を示しています。適用総額を件数で割って、さらに0.7で割ることで実際のM&A投資額を逆算すると、平均2.5億円程度のM&A案件で利用されていることが分かります。
利用が進まない背景
本措置は5年後からの益金算入があることに加え、適用での認可制度、事後報告制度と煩雑な手続きが求められます。これらの要素が適用を躊躇させている要因かもしれません。
広く利用されている賃上げ促進税制
圧倒的な利用実績
一方で、賃上げ促進税制は令和6(2024)年度で30万社近くが利用しており、税額控除適用額も1兆円近くと、税額控除適用制度のうちの半分近くを占める制度になっています。
普及による「終わり」の始まり
しかし、令和8(2026)年度税制改正により、この制度にも段階的な終了が決定されています:
- 大企業向け措置:1年前倒しで令和8(2026)年3月31日に廃止
- 中堅企業向け措置:要件強化の上で令和9(2027)年3月31日の期限で廃止
- 中小企業向け措置:教育訓練費上乗せ措置を廃止
制度の「終わり方」から見える税制運営の現実
利用拡大のジレンマ
利用が広がることはそのまま税収減につながるため、制度が普及した段階では見直しが検討されることも有り得ます。賃上げ促進税制の段階的廃止は、まさにその例といえるでしょう。
利用頻度による制度の運命
利用頻度が低い制度は、適用期限の到来をもって廃止される措置が毎年採られています。もしかすると、M&A促進税制は利用頻度の低い制度との判定を受けるかもしれません。
企業が考慮すべきポイント
使える制度は早期検討を
利用実績の高い制度でも、普及すれば見直しや廃止される可能性があることを念頭に、活用できる制度は早期に検討することが重要です。
複雑な制度こそ専門家に相談を
M&A税制のように利用率の低い制度は、手続きの複雑さが原因となっている可能性があります。該当する場合は専門家に相談し、適用要件や手続きを確認することが必要でしょう。
適用実態調査のデータは、各制度の現実的な活用度を示す貴重な指標として、今後の税制活用戦略を考える上で参考になるでしょう。
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