貯蓄から投資の時代に中小企業がすべきこと
資産所得倍増プランとは
政府は、家計に眠る現預金を投資につなげ、勤労所得に加え金融資産所得を増やすことが重要であるとして、2022年11月に「資産所得倍増プラン」を掲げました。
現状、国内における家計の金融資産約2,000兆円のうち、半分以上がリターンの少ない現預金で保有されており、株式・投資信託・債券への投資額は、308兆円とわずか15.4%に過ぎません(出典:日本銀行「2022年第3四半期の資金循環(速報)」より)。
家計金融資産の日米英比較
(出典:内閣官房新しい資本主義実現本部事務局「資産所得倍増に関する基礎資料集」より)
諸外国に比べ少ないという判断から、投資未経験者にも投資による資産形成へ一歩踏み出してもらうよう、働きかけを行う方針です。
具体的には、今後5年間で
- 投資経験者の倍増…NISA総口座数(一般・つみたて)を2022年6月現在の1,700万口座から3,400万口座へ倍増
- 家計による投資の倍増…NISA買付額を2022年6月現在の28兆円から56兆円へ倍増
といった数値目標が挙げられています。
7本の柱の取り組み
プラン推進のため、以下の7本の柱の取り組みを一体として進めるとしています。
- 家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせるNISAの抜本的拡充や恒久化
- 加入年齢の引き上げなどiDeCo制度の改革
- 消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設
- 雇用者に対する資産形成の強化
- 安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実
- 世界に開かれた国際金融センターの実現
- 顧客本位の業務運営の確保
「7本柱」の中でも、中小企業が注目すべきなのが、「雇用者に対する資産形成の強化」です。
企業による雇用者の資産形成に向けた強化
政府は、企業による雇用者への資産形成の支援強化に向け、
- 中立的な認定アドバイザーの活用
- 企業による資産形成の支援強化
などを企業に求めていく、としています。
企業に求めるにあたって、国としては
- 雇用者が中立的な認定アドバイザーを活用する場合に、企業から雇用者に対して助成を行うことを後押し
- 中小企業において職場つみたて NISAや企業型確定拠出年金、iDeCoが広がるように、これらの制度の普及に取り組むとともに、必要な支援について検討を行う
といった取り組みを行っていくとしています。
企業年金運用で企業も取り組みが求められる
一方で金融庁は企業年金の運用について、企業自身にも取り組みを求める方針です。
現状では、
- 企業型DCのうち、運用されず放置された資産が2,600億円
- 確定給付企業年金(DB)では担当者に専門知識がなく金融機関に任せきりで運用戦略がない
などの問題が起きています。
企業に対して具体的にどのような取り組みが求められようになるのか、今後の法改正が注目されます。