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非役員の短期退職金への課税強化 2022年から適用開始

短期間勤務への退職金 課税強化へ

公務員などが退職後に役員として短期勤務を繰り返し、多額の退職金を受け取るいわゆる「天下り」の問題が大きくクローズアップされたことで、勤続5年以下の役員への退職金は「特定役員退職手当等」として区別され、課税が厳しくなっています。

役員以外でも、給与をあえて低く抑え、退職金を上乗せし税額を低く抑えるような手法が広く行われていたことから、2021年度(令和3年度)の税制改正により、勤続5年以下の「短期退職手当等」への課税が強化されることになりました。2022年1月1日より適用開始されています。

①退職所得の計算方法(原則)

退職所得の計算方法は以下の通り、収入金額から退職所得控除を控除後に1/2にします。これは、退職金は退職後の生活を支える大事な資金であるため、課税を抑えようという意図によるものです。

■退職所得金額計算方法

  • 退職所得金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2

退職所得控除額は以下のように計算します。

■退職所得控除額

勤続年数(=A) 退職所得控除額
20年以下 40万円 × A
(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 800万円 + 70万円 × (A – 20年)

例えば、勤続10年で500万円の退職金を受給した場合、以下のように計算します。

  • 退職所得金額=(500万円-40万円×10年)×1/2=50万円

課税対象所得は50万円です。

②特定役員退職手当等の計算方法

「特定役員(法人の取締役、執行役などの役員、国会議員や地方公共団体の議会の議員、国家公務員や地方公務員)」に該当すると、勤続5年以下で得た退職金は「特定役員退職手当等」として区分され、収入金額から退職所得控除を控除後に1/2にすることはできません。

■特定役員退職手当等についての退職所得金額計算方法

  • 退職所得金額=特定役員退職手当等の収入金額-退職所得控除額

例えば、勤続4年で500万円の退職金を受給した場合、以下のように計算します。

  • 退職所得金額=500万円-40万円×4年=340万円

課税対象所得は340万円です。

③短期退職手当等の計算方法 2022年1月1日から

②以外の勤続5年以下の退職金は「短期退職手当等」に分類され、異なる計算方法が適用されます。

「短期退職手当等」の300万円を超える部分については、収入金額から退職所得控除を控除後に1/2にされません。

2021年度の税制改正で措置が講じられ、2022年1月1日に適用開始されました。

■短期退職手当等についての退職所得金額計算方法

短期退職手当等の収入金額-退職所得控除額≦300 万円の場合 短期退職手当等の収入金額-退職所得控除額>300 万円の場合
退職所得金額=(短期退職手当等の収入金額 - 退職所得控除額) × 1/2 退職所得金額=150 万円(※1) + {短期退職手当等の収入金額 -(300 万円 + 退職所得控除額)}(※2

※1:300万円以下の部分の退職所得金額
※2:300万円を超える部分の退職所得金額

例えば、勤続4年で500万円の退職金を受給した場合、以下のように計算します。

  • 退職所得金額=500万円-(40万円×4年)=340万円>300万円
  • 150万円+{500万円-(300万円+40万円×4年)}=190万円

課税対象所得は190万円です。


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