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~個人事業の開業を検討している方へ~ 「開業費」 について

個人で事業を始める場合、開業時に必要に応じて提出すべき書類として以下のようなものがあります。

書類名 届け先
個人事業の開業・廃業等届出書(開業届) 納税地の税務署
事業開始(廃止)等申告書 各都道府県税事務所
青色申告承認申請書 納税地の税務署
青色事業専従者給与に関する届出書 納税地の税務署
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 給与支払事務所等の所在地の所轄税務署

上記の中で、「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」に記載された開業年月日が、開業日です。

しかし、事業活動は開業日にスタートするというわけではありません。

開業するまでには、その準備段階から開業に向けて、さまざまな支出が発生します。これらの支出を「開業費」と呼びます。

今回は、その開業費について取り上げます。

具体的にどのようなものがあるか

原則として、開業前に支出したものが該当します(開業前の期間に消費したもの、または開業前の期間に対応する費用)。

  • 広告宣伝費
  • 接待費(交際費、会議費)
  • 旅費交通費
  • 通信費
  • 調査費
  • 水道光熱費
  • 人件費(給与、福利厚生費)
  • 地代家賃
  • 支払利息
  • 支払手数料
  • 消耗品費
    開業前の期間に消費し、または開業前の期間に対応するもの。
    開業後に使用するために購入した家具、備品などで、10万円未満のため消耗品費として計上しているものについては、開業費ではなく、開業年の必要経費として計上します。

開業費に含まれないのは、以下のようなものです。

  • 前払費用に該当するもの
  • 固定資産に該当するもの
  • 開業後に使用するために購入した家具、備品などで、10万円未満のため消耗品費として計上しているもの
  • そもそも資産計上すべきで経費に該当しないもの(敷金など)

開業費は資産 任意償却により大きな節税効果が

開業費は所得税法上繰延資産に該当します。繰延資産とは、個人が支出する費用のうち、支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものを指します。資産に該当するということは、支出時にすべてを経費として計上するのではなく、一度資産として計上します。

そしてその開業費を、所得税法で認められた方法により償却費として経費化します。

その計算方法は、60カ月の均等償却(開業費の1/60が毎月経費として計上できる)のほか、支出した金額のうち任意の金額を償却費とする「任意償却」による方法が認められています。任意償却にした場合、開業の年分に償却しても、その翌年以降に償却しても構いません。

60カ月を経過した場合に償却費を経費にできないとする規定はありませんから、開業費の未償却残高はいつでも償却費として経費にすることができます(国税庁:質疑応答事例「償却期間経過後における開業費の任意償却」)。

任意償却を採用した場合は、経費として計上する時期に注意が必要です。

例えば、開業後利益が上がらず赤字になったり、利益があったとしても所得控除によって所得税が発生しない場合などに、開業費の償却費を計上してもその効果は期待できません。相応の利益が発生したときに経費として計上することによってこそ、その節税効果があるといえます。

開業費とした根拠、証拠を明確に

それでは、どこまでの支出が開業費として捉えられるかですが、本人が「これは開業費になる」と主観的に判断したとしても、客観的に証明できる取引の記録やその基となる資料(領収書や請求書など)の保存が必要です。

ある支出が開業費に該当するかは、客観的に見てその支出が業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行に必要なものに限られます。これは、開業後の費用についても同様です。

開業費を含む費用の考え方については、自己解釈せず税務署や当法人へ相談し、後々トラブルにならないようにしてください。


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