インボイス制度と独禁法・下請法・建設業法
下請けへのインボイス強制などは法律上の問題に
インボイス制度上、免税事業者はインボイスを発行できません。
免税事業者に発注している会社は消費税の仕入税額控除ができず、納税消費税が増えてしまうため、何らかの対応を迫られることになります。
しかし、対価の減額や取引の停止、免税事業者から課税事業者への転換要請などを行う場合、独禁法、下請法、建設業法といった各種法律に抵触しかねないため注意が必要です。
そこで本記事では、どのような場合に独禁法、下請法、建設業法に触れるのかについて解説します。
独禁法・下請法・建設業法での禁止行為
独占禁止法上の問題
自己の取引上の地位が相手方に優越している場合、相手に対し、不当不利益を与えることは、「優越的地位の濫用」として、独占禁止法上問題となります。
取引条件の見直しに当たっては、「優越的地位の濫用」に該当する行為を行わないよう注意が必要です。
下請法上の問題
下請法の規制の対象となる場合で、発注事業者が免税事業者である仕入先に対して、仕入先の責めに帰すべき理由がないのに、発注時に定めた下請代金の額を減じた場合には、下請法第4条第1項第3号で禁止する「下請代金の減額」として問題となります。
免税事業者であることは、仕入先の責めに帰すべき理由には当たりません。
建築業法上の問題
建設業法の規制の対象となる場合で、元請負人が、自己の取引上の地位を利用して免税事業者である下請負人に対して、契約後に、取り決めた下請代金の額を一方的に減額した場合、建設業法第19条の3の「不当に低い請負代金の禁止」の規定に違反する行為として問題となります。
課税事業者になるよう要請した場合は?
取引先の免税事業者に対し、課税事業者になるよう要請を行うこと自体は、独占禁止法上問題となるものではありません。
しかし、課税事業者になるよう要請することにとどまらず、課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告することは、独占禁止法上または下請法上、問題となるおそれがあります。
仕入消費税の転嫁保証は必要最低限
以上で見てきたように、仕入側の都合で、免税事業者が負担していた消費税額にも満たないような価格を設定した場合には、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」、下請法で禁止する「買いたたき」、建設業法の「不当に低い請負代金の禁止」の規定違反として問題となります。
逆に、免税事業者であることを前提にした取引単価を、課税事業者になってからも、単価改定交渉に応じずに据え置くことも、下請法第4条第1項第5の「買いたたき」に該当し、独占禁止法にも抵触します。
事業者がどの事業者と取引するかは基本的に自由ですが、取引上優越した地位にある事業者が、インボイス制度の実施を契機として安易に対価の減額や取引の停止などを行えば、違法となる可能性があります。
取引先の免税事業者との間で、取引価格などについて再交渉する場合には、免税事業者と十分に協議を行い、仕入側の事業者の都合で低い価格を設定するなどしないよう、注意しましょう。
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