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創業時の個人保証を不要とする新しい信用保証制度開始

スタートアップ創出促進保証制度とは

2022年6月7日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を踏まえ、創業時の経営者保証を不要とする新しい信用保証制度として、「スタートアップ創出促進保証制度」が2023年3月15日より開始されました。

これまでも、無担保・無保証での融資は日本政策金融公庫の創業融資などがありましたが、創業時の民間金融機関からの借入のうち約5割には経営者による個人保証が付与されていました。

創業を考える人の約8割は借金や個人保証を抱えるのを失敗時のリスクと考えており、創業に踏み切れない阻害要因にもなっていると「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」で指摘され、創業の促進につながるよう新しい制度が開始されました。

最長3年以内の元本返済の据置期間も

本制度の保証対象者は、創業を予定している(2カ月以内に法人を設立予定)個人もしくは創業5年未満の法人です。

保証内容

保証対象者
  • 創業予定者(これから法人を設立し、事業を開始する具体的な計画がある者)
  • 分社化予定者(中小企業にあたる会社で事業を継続しつつ、新たに会社を設立する具体的な計画がある者)
  • 創業後5年未満の法人
  • 分社化後5年未満の法人
  • 創業後5年未満の法人成り企業
保証限度額 3,500万円
保証期間 10年以内
据置期間 1年以内(一定の条件を満たす場合には3年以内)
金利 金融機関所定
保証料率 各信用保証協会所定の創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せした保証料率
担保・保証人 不要

保証限度額は3,500万円で、運転資金および設備資金の両方に使えます。

保証期間は10年以内であり、1年(条件を満たせば最長で3年)以内の元本返済の据置期間がありますので、資金が特に必要な創業期に、ある程度資金の心配をせずに事業へ集中できます。

保証料率については、担保・保証人が不要な代わりに、各信用保証協会所定の創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せした料率となっています。

本制度の留意点

本制度を受けるためには、創業計画書(スタートアップ創出促進保証制度用)の提出が必要です。

創業計画書

(日本政策金融公庫:「各種書式ダウンロード」より)

さらに、保証申込の受付時点で税務申告1期未終了の創業者にあっては、創業資金総額の1/10以上の自己資金を有している必要があるので注意しましょう。

また、本制度による融資後には、原則として会社を設立して3年目および5年目のタイミングで、中小企業活性化協議会による「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」に基づいた確認および助言を受ける必要があります。

ガバナンス体制の整備に関するチェックシート

(中小企業庁:「経営者の個人保証を不要とする創業時の新しい保証制度(スタートアップ創出促進保証)を開始します。」より)

今後減っていく経営者保証

経営者保証を減らしていく流れは、創業時に限りません。

2023年4月1日から、経営者保証改革プログラムに基づく新たな経営者保証に関する取り組みがスタートしました。

  • 民間金融機関による融資 
    保証を徴求する際の手続きを厳格化することで、安易な個人保証に依存した融資を抑制するとともに、事業者・保証人の納得感を向上させるため、監督指針を改正
  • 信用保証付融資 
    信用保証制度において、経営者の取り組み次第で達成可能な要件を充足すれば、保証料の上乗せ負担などにより経営者保証の解除を選択できる制度を創設
  • 中小企業のガバナンス 
    経営者保証解除の前提となるガバナンスに関する中小企業経営者と支援機関の目線合わせを図るとともに、支援機関向けの実務指針の策定や、中小企業活性化協議会の機能強化を行い、官民による支援態勢を構築

といった取り組みを行っていくとしています。

また、経営者保証に依存しない新規融資の割合については、金融庁が主要行および地域銀行のデータを継続的に公表しています。

経営者保証に依存しない新規融資の割合は、政府系金融機関においても、民間金融機関においても上昇中です。

経営者保証に依存しない新規融資の割合

(中小企業庁:「経営者保証」より)

政府は今後一層、安易な個人保証に依存した融資を抑制し、事業者・保証人の納得感を向上させ、経営者保証に依存しない新たな融資慣行の確立に向けた意識改革を進めるとしています。

創業時には創業を後押しするために開始された「スタートアップ創出促進保証制度」を活用し、また創業後も経営者保証のない融資を受けられることで、事業へ集中できるようになります。


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